悲しきバレンタイン
今週のお題「バレンタインデー」
おはようございます。
2月12日金曜日です。
今日は、西日本では暖かい陽気に覆われます。
さて、まもなくバレンタインデーです。
今年もチョコレートを巡る男女のドラマが繰り広げられるでしょう。
※※※
憧れていた職場の先輩がいました。
ある日、ちょうどバレンタインデーを翌日に控えていた日です。
同僚のミスで私たちは残業を余儀なくされました。
先輩が私が座っているデスクに近づいてきました。
「今日は本当に遅くまで働かせて申し訳ない」
頭を下げてきました。
壁の時計は午後10時を指しています。
私は
「いいえ、そんなことありません」
と素直に返事をしました。
「この分だと、日付が変わってしまうかもしれないなあ。本当にすまない」
「○○さんが悪いわけではありませんから」
○○さんと言うのは先輩です。
「そうか」
先輩はそう呟くと部屋から出て行ってしまいました。
ちょうどその時、3人ほど部屋にいましたが、それぞれが黙々と仕事をこなしています。
5分後、先輩は部屋に戻ってきて、さりげなく温かいコーヒーを注いでくれました。
それから2時間後、バレンタインデー当日になりました。
仕事の目途もつき、皆がホッとした表情を見せています。
中には眠りについている人もいます。
私は先輩のもとへ歩み寄りました。
チョコレートを持って。
「○○さん、先ほどはコーヒーをありがとうございました。今までに飲んだコーヒーで一番おいしかったです」
本当においしかったのです。
「そうか。それは良かった。あとは俺がやるから。今日はお疲れさま」
「あの、これよろしければ受け取ってもらえませんか」
私は勇気をだして、先輩にチョコレートを手渡しました。
「これは?あ、そうか今日は2月13日、いや12時を過ぎたから14日だ。ありがとう。でも、受け取ることができないんだ。期待に応えられなくてすまない」
この言葉は私を驚愕に陥れました。
なぜ、受け取ることができないのですか?心の中で叫びました。
私が黙っているのを不思議に感じたのでしょう。
先輩は口を開きました。
「実は仕事でミスしたのは俺なんだ。もうこの職場を辞めようと考えている。さっき、君にコーヒーを淹れている間に決めたんだ。取り返しのつかないミスをしてしまった以上、俺はこの会社にいる価値はないって」
「そ、そんな。ほら、もうある程度回復できたじゃないですか。○○さんが辞めるような大きなミスではないはずです」
「君には分からないよ。とにかく、私は君からの気持ちを受け取ることなんてできない。それに、俺は故郷へ帰って実家の手伝いもしなくてはいけないとも思っている。実は俺、他に好きな女性もいるから。君に会えたことは嬉しかったし、これからも君のことは忘れないよ」
先輩は目の前に差し出されたチョコレートが入っている袋を突き返しました。
時間をかけて作ったとっておきの贈り物。
私はその袋をゴミ箱に捨てました。
溢れてきた涙を気に留めずに。
※※※
バレンタインデーには楽しい思い出を作りたいですね。
それから、私のように(物語の中の)チョコレートをゴミ箱に捨てる行為は止めて下さいね。
食べ物は大切に♪